「強欲は善だ」

中学校の頃、株取引のことについては全くわからなかったにもかかわらず、欲望に正直に、、悪魔の仮面とカリスマとスタイリッシュな姿で主人公の若者バドを操る、投資家ゴードン・ゲッコーを演じたマイケル・ダグラスに憧れた。
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小さい頃、ゴールデン洋画劇場で何度もこの映画を吹き替え版で観るほどに、将来、投資家になりたいとかは思わなかったが、マイケル・ダグラス＝ゴードン・ゲッコーのような大人の男になりたいと思った。「Greed is good.（強欲は善だ）」「Money never sleeps.（金は眠らんぞ）」…バスルームで、髪を後ろに流す、オールバックを真剣に真似ようと思った。

大人になるほどに、マイケル・ダグラスの映画の吹き替えだけでなく、さまざまなＣＭなどで、ゴードン・ゲッコーの声を聞くごとに、私が惹きつけられたのは、あの小川さんの声があったからだと思った。スクリーンの俳優がかもしだす、カリスマ性を裏打ちする懐の深さとがめつさ、スマートさと野心を秘めた、エグゼクティブの声こそ、声優としての小川さんの実力を象徴していたのだと実感した。
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しかし私にとっては、小川さんの声が響いてくるごとに、マイケル・ダグラスではなく、ゴードン・ゲッコーだった。ここまで俳優の存在をしのいで、吹き替えの声を聞くだけで野心家の主人公が浮かぶ。それこそ、小川さんの才能だったのだろう。

声を聞いても歳を感じさせない。それも声優としての力量だろう。スクリーン同様、いつまでも若く感じてしまう。それも夢の世界をつくるプロのなせる技ゆえか。本当に素晴らしい作品の数々をありがとうございます。哀悼の意をささげます。